大切な人が亡くなった時、人はだれでも激しく動揺します。葬儀や火葬が終わった後に、彼らの残したものを整理するべく動き始めたときも、やはり、同じように動揺するでしょう。
多くの遺品整理業者が、このような残された家族の心に寄り添い、適正な金額を提示し、真摯に仕事にあたります。場合によっては、喪の儀式の手助けをすることすらあります。
しかし一方で、いわゆるボッタクリ業者、悪徳業者がいるのも事実です。そのような遺品整理業者から身を守るための方法について考えていきましょう。
きちんとした資格を持っているかどうかをまずは見てください
今までの記事でも何度かお話していますが、悪徳遺品整理業者かそうではないかの見極めの一つとして、「資格の欄を見る」ということが挙げられます。
私たちは、「資格」の欄になにがしかの記載があると、ついつい安心してしまいがちです。
特にそこに、「産業廃棄物収集運搬許可証(取得済み)」などのように書かれていると、「ああ、ここの業者は遺品を適切に処理してくれるんだ」「ちゃんと資格を持っているんだ」と考えてしまうことでしょう。
しかし、この認識は間違っています。
産業廃棄物収集運搬許可は、あくまで、「産業廃棄物」を処分するための資格です。
このため、遺品整理に代表されるような、一般家庭から出た廃棄物については、これを扱うことはできません。
遺品整理で出た廃棄物を扱えるのは「一般廃棄物収集運搬業」であり、これは都道府県の認可がなければ得られない資格です。
しかし一般廃棄物収集運搬業は、なかなか認可が下りないため、「産業廃棄物収集運搬許可」を掲げ、遺品整理を行っているところもあります。
また、遺品整理のときに出たものをリサイクル品として買い取るためには古物商の許可を得ていなければなりません。
一般廃棄物収集運搬業を持っていても、この資格を持っていなければ、きちんとした査定や、きちんとした買い取りを行うことはできません。
なかには、「別に資格なんかなくたって、きちんと仕事をしてくれればいい」と思う人もいるでしょう。
しかし、一般廃棄物収集運搬業を初めとして、きちんとした資格を持っていないということは、
- ・自分たちが違法行為をしていると自覚したうえで、利益のみを優先して仕事をしている
- ・悪意はないものの、一般廃棄物収集運搬業などの資格が必要であると知らない不勉強な業者である
ということです。このような業者に、適切で、適正で、誠実な業務が求められるでしょうか?
ちなみに、これ以外にも「遺品整理士」という資格があります。
これは民間資格のうちの1つであり、一般社団法人遺品整理士認定協会が主催しています。遺品整理について専門的に学んだ人に与えられる資格であり、現在、遺品整理業者のなかにはこの「遺品整理士の資格を持った者が対応にあたる」としているところもあります。
もっともこの資格は国家資格ではありませんし、遺品整理業者になるときに必要不可欠な資格というわけでもありません。
そのため、法的な力はありません。ただ、この資格を取った人間を業務にあたらせるという業者は、少なくとも、遺品整理の勉強をスタッフにさせている勉強熱心な業者であると言えるでしょう。
一般廃棄物収集運搬業の認可を受けているかはまず一番に見たいポイントです。「遺品買い取り」を掲げている業者ならば古物商の資格も必須です。遺品整理士の資格はプラスアルファの要素として考えるべきです。
見積もり金額が正しいかどうかを見極める
悪徳遺品整理業者かどうかを事前に知るために極めて有用なのが、「事前に複数の会社から見積もりをとっておく」ということです。
「人が亡くなる」というときには、非常に多くのお金がかかります。
病院代の清算、葬儀の費用、お墓の費用、法事の費用(初七日法要や四十九日法要など)……。それ以外にもイレギュラーな出費が続きますから、残された家族としては、できるだけ安い遺品整理業者に頼みたくなるものです。
しかし、ちょっと待ってください。
安いものにはすべて理由があります。
たとえば、本来は組み込むべき費用を見積もりに入れていなかったり、後から理由をつけて高額な請求をしてきたり、いい加減な作業で家に傷をつけたり……という、「安かろう悪かろう」の業者がたくさんいるのは紛れもない事実です。また、ひどいところでは、作業員による窃盗事件さえ起こっています。
もちろん、安い業者がすべて「悪い業者である」ということではありません。
なかには、広告費を削り、無駄な作業を削り、さまざまな営業努力をして価格を押さえている優良な業者もいることでしょう。しかし、遺品整理は人生のなかでそう何度もやるものではありませんから、このような「安くて、かつすばらしい業者」を見つけるのは困難を極めます。自分の知人が使っており、その時の対応がすばらしかったということであれば使いやすいのですが、なかなかこうもいきません。
このため、特段の知識や有効なクチコミがない状態であるのなら、不自然に安い業者は避けて通った方が安心ということになります。
そのために有効なのは、「数多くの業者に見積もりの依頼を出して、適正金額を把握する」ということです。
いくつかの業者に同じ条件で見積もり依頼を出せば、相場を知ることができます。その相場から大きく外れた安すぎる業者は省きましょう。もちろんこれは、「高すぎる業者」をはじくためにも有効です。
「接客態度」は判断基準の1つとなりうる
「口は悪いけど良い人だから」という表現は、よく使われる表現です。しかし、遺品整理業者においてはこのような表現は適用すべきではない、と考えてください。
たとえば、あなたが心に傷を抱えた状態で、遺品整理業者に電話をしたとしましょう。
そのときに非常に冷たい電話応対をされたり、契約をいたずらにせかすだけだったり、また実際に現場に来た時に「こんな古いタンスはとっておいても仕方ない、処分すべきだ」と言われたり、「うわ、汚い部屋だな!」と言われたりしたら、あなたはどう思うでしょうか。
もちろん、このような言い回しをする業者のなかには、技術に優れたところもいるかもしれません。
しかし、スタッフに対して、人間としての当たり前の礼儀作法や思いやりを教育できていない遺品整理業者は、総じて悪徳業者である可能性が高く、避けるべきだと言えます。
また、たとえ作業自体は滞りなく進んだとしても、後々まで、そのときに言われた言葉や態度が尾を引きかねません。
遺品整理というのは非常にデリケートなものですから、少しでも「不快だな」と思ったのならば、そこの業者は避けるべきです。
- 電話応対が冷たい
- 契約をせかしてくる
- 何度も電話をかけてきて、契約を結ぼうとしてくる
- 他の業者をこきおろす
- 「早く整理しないと、お母さまが成仏されませんよ」などの言い回しを使う
このような業者は、契約せずに断るべきです。あまりにも電話がしつこいようならば、着信拒否をするのもよいでしょう。
「資格を持っていないこと」「見積もりが適正でないこと」「対応がひどいこと」は、そのまま、「ボッタクリ業者の要素」に繋がっています。
これらの問題点を抱える業者は、実際の作業費用についても、不透明で高額なことが多いので、絶対に避けましょう。遺品整理業者は、たくさんあるのですから。