人は亡くなるとき、多くの物を残していくものです。
そのため、その整理というのはなかなかに大変なもの。
現在ではそのような事実もあり、「生前整理」というかたちをとる人もいます。
ただ、以前として「遺品整理」という考え方があるのも確かです。
ここでは、「生前整理」と「遺品整理」のそれぞれのメリットとデメリットについて見ていきましょう。
<生前整理とは何か>
生前整理とは、その名前の通り、「生きている間に、荷物を片付けること」を言います。
この規模は、実にさまざまです。
自分の身の周りの持ち物を少しずつ減らしていき必要最低限のもので生活ができるようにするのも「生前整理」ですが、「高齢者施設に行くために、今まで住んでいた家を処分する」などのように大がかりなものもまた「生前整理」と呼ばれます。
<生前整理のメリットについて>
生前整理をすることのもっとも大きなメリットは、「自分の意思を最大限反映させることができる」という点です。
生前整理や遺品整理について調べている人ならば、当然「終活」「エンディングノート」という言葉をご存知のはずです。終活の一環として、「この人にあれを残したい」「これはこのように処分して」ということをエンディングノートに細かく書き記すことは、とても有意義なことです。
しかし、エンディングートは「遺言書」ではないので法的な拘束力はありません。もちろんご家族は最大限あなたの遺志を尊重してくれると思われますが、それでも、亡くなった後に自分の物がどのように処分されるかはわからないわけです。
しかし、生前整理をしておけば、「自分の好きなように」「自分が本当に渡したい人に」、自分の気持ちがこもったものを渡すことができます。
また、生前整理をしていくうえで、自分自身の財産について向き合う必要も出てくるでしょう。自分の財産はどれくらいあるのか、それをどのように分配していけばいいのかなどをしっかりとまとめることができます。「『最後の退院となります』と言われて病院から送り出されてきた親が、真っ先にやったのはこれだった」という声もよく聞きます。
生前整理をしておくことで、残される家族の負担というのは非常に軽くなります。これは、「身の周りのものを整理する」というパターンの場合でも、「財産などを処分しておく」というパターンの場合でも同じです。
前者の場合は、荷物の絶対量を減らすことにより、後での片付けがラクになるというメリットがあります。
後者の場合は、「土地の権利書がどこにいったかわからない」「故人の銀行印がどれだかわからない!」というようなパニックを避けることができるという利点があります。
また、生前整理を行うことで、自分が今までなし得てきたことや思い出に触れることもできます。これは、「振り返り」であるのと同時に、「残された時間を、どのようにしてよりよく生きていくか」ということを考える指針ともなります。
<生前整理のデメリット>
では、生前整理のデメリットとは何なのでしょうか。
すべての人が「死にゆく自分」を受け入れられるわけではありません。まだ若くして亡くなる方、心残りがあるのに重い病などにかかった方などは、「自分が死んでゆくこと」を受け入れられないこともあります。
頭のなかでは、「後が見苦しくないように整理をしておかなければ」「家族のことを考えて、きちんとしておかねば」と思うでしょう。そのため生前整理をやり始めるのですが、やはり、「なぜ自分は死ななければならないのか」「なぜ自分は、まだ若いのにこのような整理をしなければならないのか」という思いが去来します。
この結果、「生前整理自体がストレスになる」ということもあるのです。
銀行印や財産に関わることはまだ比較的冷静に処理ができても、アルバムの処理などはかなり精神を摩耗します。残り少ない時間を、「生前整理をする」というストレスにさらされながら過ごすのは、かなりつらいものです。
また、財産がある場合などは、生前整理をしているときに親族間でもめることがあります。この「もめごと」も、なかなかつらくてストレスになるものです。特に、今まで仲がよかった家族が、生前整理の過程でもめていくというのは、かなりつらいことでしょう。
お年を召した方の場合、「生前整理で体力が消耗する」ということもよくあります。
また、生前整理は、どれほど「完璧にやれた!」と思っても、やはりなにがしかの「処分しきれなかった物」は出てきます。このように考えると、生前整理というのは、「遺産整理をしやすくするための前準備」とも言えるのかもしれません。
<遺品整理とは>
遺品整理とは、読んで字のごとく、「亡くなった方が残したものを処分していく」という工程を指します。
この「処分する方法」というのは、実にさまざまです。
たとえば、リサイクルショップに出す。遺品整理業者に頼んで整理してもらい、不用品を引き取ってもらう。形見分けをする。
このように、遺品整理のやり方というのはたくさんあります。
<遺品整理のメリット>
遺品整理のメリットは、「完璧に片付けられる」ということです。
生前整理は、どれだけ完璧にやったとしても、必ず何かが残ります。これはごく当たり前のことです。パジャマ、洋服、食器、本・・・・・・。これらのものは、故人が旅立つ瞬間まで必要になるものです。どれだけ生前整理をしていたとしても、「必要最低限の身の周り」のものはまだそこにあるわけです。
遺品整理をする場合、それらもまとめて処分することができるというメリットがあります。
「片付けること自体が、自分の心を落ち着かせる手段になることもある」という点も遺品整理のメリットとして挙げていきます。
遺品整理を行うタイミングに、「正解」はありません。亡くなってすぐに遺品整理をするのも決して悪いことではありません。ただ、亡くなられた直後はいろいろばたついていますし、ある程度落ち着いてから遺品整理にとりかかる人もいるでしょう。
「肉親が死んだときにはパニックになってしまって、葬儀でもろくに涙も出なかった。だけれど、遺品整理でアルバムを見つけた時、とめどもなく涙が流れた」という人もいます。愛しい人、大切な人が残した荷物に触れ、それを片付けていくということは、その「亡くなった人」の思い出に触れることにもつながります。それによって、大切な人の死を自分のなかで昇華できる、という人もいるでしょう。
もちろん、淡々と処理することもできますし、それが悪いわけではありません。また、心情的にどうしても辛くて整理ができない、ということであれば、無理をする必要もありません。
<遺品整理のデメリット>
遺品整理のデメリットは、「手間がかかる」ということでしょう。
生前整理をしていても、すべての荷物を片付けることはできません。しかし生前整理をしているかいないかで、遺品整理の難易度は大きく変わります。生前整理をしている人の場合、財産目録や権利書などがまとめることが多いのですが、これらをまとめておくだけで、残された家族はとても作業がしやすくなります。しかし、遺品整理の場合、本人が生きていないのだから、確認をとることもできません。
遺族の手間は非常に大きくなってしまいます。
加えて、遺品整理に頼る場合は、遺族に余計なお金をかけさせることにもなります。
自分で少しずつ生前整理を行っていたときと違い、処分にはお金も絡んでいます。
葬儀費用は現在200万円程度が相場ですが、さらにそこに「お金の負担」を積み重ねることになるわけです。
このように、生前整理と遺品整理は、まったくその性質が違うものです。
ただ、ご家族のことを思うのであれば、ある程度は処理をしておいた方がよいでしょう。
http://ihin.amsstudio.jp/063.html