「特殊清掃」という言葉をご存知でしょうか。現在ではドラマや映画、小説などのメディアでも取り上げられることがあるので、耳にしたことのある人はいるかもしれません。
今回は、この「特殊清掃」について取り上げます。
特殊清掃とは何なのか。特殊清掃にかかる料金はいくらくらいなのか。何によって値段が変わるのか……。自分自身がそれを「利用する側」にならない限り、なかなか知ることのない、特殊清掃の仕事の内容について見ていきます。
<特殊清掃の必要性について>
まず、「そもそも特殊清掃とはどんな仕事なのか」について見ていきましょう。
これを知るためには、「人はどのようなところで、どのようにして亡くなっているか」についても勉強しなければなりません。
2009年の段階の統計ではありますが、現在、ほとんどの人は病院で息を引き取っています。
78.4パーセントの人が病院で死を迎え、自宅でなくなる人の割合はわずか12.4パーセントです。
これは、今から60年以上前、1951年のころには考えられなかったことです。当時は82.5パーセントの人が自宅で亡くなり、病院で亡くなる人の割合はわずか9.1
パーセントにすぎませんでした。
しかしこの時代は、1世帯の平均人数は5人もいました。対して2009年の頃は2.5人程度になっています。また、単独世帯も、1975年の頃にはわずか18.2パーセントにすぎなかったのに、2010年の段階では25.5パーセントとなっており、しかもこれは毎年増加傾向にあります。
<孤独死する人の割合も増加傾向に>
現在では多くの人が病院で亡くなっています。つまり彼らには、「看取る人」がいるわけです。
しかし、現在の状態で、「家で亡くなる人」のなかには、「孤独死」というかたちで命を終わらせる人もいます。昔のように、大勢で1軒の家に住んでいる……というわけではありませんから、「年老いた高齢者が1人だけで住んでいる」という家庭も非常に増えているのです。
この結果として問題になっているのが、「孤独死」です。
多少の増減はあるものの、孤独死をする人の割合は年々増加傾向にあります。
2002年には1354人であったのに、2013年には2733人となっています(近年で一番人数が多かったのは2010年の2913人)
また、「孤独死をして、ほかの人に発見されるまで、相当期間の時間が必要だった人」の割合も増えていっています。2008年には154件だったのに、2012年には220人に達しています。
このように、「世帯構成の移り変わり」が、「孤独な死」に直結しているという現実があります。
<孤独死の現場によりそう「特殊清掃」>
このような背景の元、需要が高まってきたのが「特殊清掃」です。
特殊清掃とは、「孤独死などをしてしまった人のお部屋や、特殊な環境で亡くなってしまった人のお部屋を掃除する仕事」を指します。(もちろん、「死亡」に関わる清掃だけでなく、ゴミ屋敷の清掃なども担当します)
人は、「死んだら終わり」というものではありません。
ご遺体があるところには、さまざまな体液がにじんでいます。糞尿が散らばっていることもありますし、ご遺体に虫などがたかっていることもあります。
「人が亡くなり、しかもその後に放置されていた状態」というのは、決してきれいなものではありません。腐敗したご遺体は臭いをまき散らしますし、その部屋全体に死臭がしみつくこともあります。
死臭は、適切に手当てをされたご遺体ですらあるものですから、長い間放置されていたご遺体、糞尿を生じるような亡くなり方をした方の場合がどれほどひどいものであるかは、想像に難くありません。
このままでは、当然、ほかの家族や新しい入居者が入ることはできないわけです。
そこで、特殊清掃員が現場に入ります。
彼らは、時に虫を退治し、時に体液を処理し、時に部屋にあるものを処分し、時にリフォームというかたちでもアプローチします。非常に過酷な仕事ではありますが、とてもニーズの高い職業であることも確かです。
ちなみにこの仕事は、「○○という資格がなければ、行うことはできない」というものではありません。ただ現在では、「事件現場特殊清掃士」という資格(事件現場特殊清掃センターの主催)などがつくられているため、専門的な知識を学ぶこともできるようになっています。
<特殊清掃の値段について>
「特殊清掃にどれくらいの値段がかかるのか」というのは、なかなか数字に出しにくいものです。
多くのところは、「○万円から」という方式をとっています。
これは無理からぬことです。
広さによっても違いますし、どれくらいの処理を必要とするかによっても値段は変わってくるからです。
ただ、一例として挙げるのなら、「床上の清掃」については「30000円から」としているところが多いようです。また、浴室の清掃に関しては50000円から、消臭剤の使用は10000円から、もう少し専門的な消臭処理となると30000円から、としているところが多いので、これが一つの基準になるでしょう。また、畳を撤去する場合は、3000円から、というのが一つの目安となります。
<汚れがひどい場合や臭いがひどい場合はどうなるのか>
臭いについて見ていきましょう。臭いについては、「見積もりのときに、作業費用として算出する」としているところも多いようです。
ただ、「臭い」というのは極めて主観的なものです。そのため、「会社の方で、独自に補償期間を設けており、『まだ臭いがするように思う』と言うことであれば、再度消臭をする」というスタイルをとっているところもあります。不安ならば、このような制度をとっているところを選ぶとよいでしょう。
また、「消臭をしたあとでも死臭が残っていた場合は、消臭にかかった分の金額をすべて返金する」というシステムをとっているところもあります。
「汚れ」については、その家(部屋)の広さだけでなく、「どれくらい汚れているのか」によっても異なります。
たとえば、1ルームの狭い部屋であっても、亡くなってから相当の時間が経っており、ご遺体の損傷もひどく、虫がたくさん発生しており、臭いも強烈だ・・・・・・という場合は、10万~15万円を超えるケースも珍しくありません。
対して、「1週間と経たない間に発見された。汚れも狭い箇所にとどまる」という場合は、60000円程度で収まる場合もあります。
このように、特殊清掃にかかる費用というのは、ケースバイケースだと言えます。人の生き方に同じものがないように、人の亡くなり方にも同じものはありません。それぞれのケースにあった清掃が行われます。
ただ、現在では、「見積額以上の追加料金は請求しない」としている業者が多いので、利用者側としてはありがたいでしょう。
放っておくと状況はどんどん悪化していきますし、臭いも強くなっていきます。発見したのならば速やかに業者に依頼し、その後の処理を任せるとよいでしょう。
「昔の方がよかった」とは、決してだれにも言うことはできません。実際現在でも多くの人が病院で命を引き取っています。ただ、単身者が増えている現状においては、「亡くなった後、だれにも発見されずに時間が経つこと」も増えてきています。このようになってしまった場合、家族は精神的にも非常に強い衝撃を受けます。
また、臭いや、部屋の状態のひどさに目をそむけたくなることもあるでしょう。このような遺族の気持ちに寄り添い、部屋をきれいに片付けてくれる特殊清掃の仕事は、必要不可欠なものだと言えます。
【参考URL】
https://www.ihin-memories.com/seisou/ziturei.html
http://www.csc-mind.org/sm/
http://www.csc-mind.org/sm/
http://www.tokuseisou.com/t-ryoukin.html
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000105vx-att/2r98520000010l2r.pdf
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/20-21-h25.pdf