「終活」という言葉がよく知られるようになってきています。現在では4人に3人が、この「終活」を知っている(高齢者の場合)と言われており、半数を超える人が「終活は必要だ」と考えています。
「遺品を整理すること」は、昔は「人が亡くなった後、その家族によって行われる作業」でした。
しかし現在は、このような終活の広がりを受けて、「自分が死んだあと、周りの人が困らないように、遺品となるものを生前に整理しておく」という考え方も出てきました。
どちらの考えの人にとっても心強い味方となるのが、「遺品整理業」です。
ただ、この「遺品整理業」、「耳にしたことはある」という人は多くても、実際にはどのようなものだか知らない人も多いはず。
ここでは、「遺品整理業とはそもそも何か」ということをお話ししていきます。
<遺品整理業の役割>
「遺品整理業」は、遺品整理業者によって行われる遺品の整理の仕事を指します。
この「遺品の整理」には、さまざまな意味があります。
たとえば、「残された家のなかにある遺品をえり分け、出たゴミを処分する」というところまでを業務とするものもあれば、「消臭や除菌までを行う」というところもあります。また、「家の清掃までを担当する」というところもあります。
1つの業者で、「基本料金ではゴミの処分まで。清掃や消臭作業は、追加料金で承っている」というところも多いのが特徴です。
「遺品整理業」というのは、かなりあいまいな部分を含む言葉です。業者ごとによって「できること」が違います。そのためあなたが、「遺品の選り分けもゴミの処理も、消臭作業も清掃作業もすべてお任せしたい」と考えるのか、「遺品の選り分けまでで良い」と考えるのかで、選ぶべき業者は異なってきます。また、金額も大きく異なるため、初めに「自分の目的はどこまでなのか」を明確にしておく必要があるでしょう。
<遺品整理業の種類>
「遺品整理業をやっている」と謳うところは、下記のような名前を掲げているところが多いと言えます。
- 便利屋
- 遺品整理業者
- 不用品整理
このなかで、いったいどれに頼めばいいのか迷う人もいるのではないでしょうか。
名前だけをみれば、「遺品整理業者」と謳っているところの方がいいように思えます。
しかし、実はこの判断は間違い。
結論から言えば、「付けられている名称は、一切関係がない」ということになるからです。
<遺品整理業の選び方~一般廃棄物収集運搬業許可>
「付けられている名称で遺品整理業を選ぶことはできない」という理由について見ていきましょう。
以前の記事で、「終活カンセラーが教える遺品整理業者を選ぶ5つのポイント」として、遺品整理業者を選ぶためのポイントを紹介しました。
そのなかでも軽く触れたのですが、遺品整理業者の場合、きちんとした資格が必要です。
遺品整理をするには、許可が必要です。国が与えるものであり、「一般廃棄物収集運搬業許可」というものです。「産業廃棄物収取運搬業許可」を掲げているところもありますが、これは文字通り、企業で出た廃棄物を扱える資格であり、「一般家庭の物である」遺品を整理することは認められていません。この2つには互換性はありませんし、「産業廃棄物を扱えるのだから、一般家庭の廃棄物も扱えるだろう」というものではないのです。
<遺品整理業の選び方~古物商の許可>
前回取り上げたのは「一般廃棄物収集運搬業許可」まででしたが、今回はもう一歩踏み込んでみましょう。
遺品整理を生業とする業者のなかには、「遺品整理をしていて、まだ有効に活用できるもの(まだ型番の新しい家電製品などが、この代表例となるでしょう。または、高価な机なども対象でしょうか)は、こちらで買い取りを行うよ」としているところもあります。
このような処理をしてもらえれば、遺品整理をお願いする家族としては、「遺品の整理ができるうえに、処分にかかるお金も必要なく、逆にお金が返ってくる。おまけに、ほかのリサイクル業者をわざわざ呼ぶ手間もないので、一石三鳥だ」と感じるでしょう。
しかしここで、1つ問題が出てきます。
それが、「古物商の許可をとっているかどうか」ということです。
遺品の処分において必要なのは「一般廃棄物収集運搬業許可」ですが、「必要のなくなった、しかし価値のあるものを買いあげる」という工程にはまた別の資格が必要になります。それが、「古物商の許可」なのです。
この古物商の許可は、公安委員会(各都道府県に設置されている。ただし、東京都のみ警視庁がその仕事を負う)からもらうものです。
なお、一定の条件はあるものの、地元の警察署に書類を提出するかたちをとれるケースもあります。
この古物商の許可がない限り、遺品整理の際に出た不用品を買い取ることは認められていないのです。
<遺品整理士の許可について>
さて、それ以外にも、「遺品整理士」を持っている、としている遺品整理業者もいます。
この「遺品整理士」は、近年よく目にする資格であり、民間資格のうちの一つです。現在は行政や業者と連携をはかり、よりよい遺品整理のかたちを残された家族に提供している人たちもいます。
この資格自体はもちろん、遺品を整理したいと考えている人にとっては役に立つものです。
しかし、「遺品整理士を持っている人=一般廃棄物収集運搬業許可や古物商の許可を持っている人」ではないので、注意してください。
<改めて見る、「名称による違い」>
この2つを踏まえて、もう1度、「名称」の部分を見ていきましょう。
「『便利屋』などのような名称を掲げているところは、実際には資格をとっていない」としているホームページなどもありますが、これは実は正しくはありません。
「便利屋」と名乗っているところであっても、一般廃棄物収集運搬業許可も古物商の許可も持っている、という業者もいます。
対して、同じように「便利屋」と名乗り、遺品回収を謳っていても実際には一般廃棄物収集運搬業許可を持っていないところもあります。
「遺品整理専門」と謳っていても、一般廃棄物収集運搬業許可の許可も古物商の許可も持っていないところもあります。もちろん、一般廃棄物収集運搬業許可も古物商の許可も持っているところもたくさんあります。
これは、「不用品回収」でも同じことが言えます。
また、「何の資格も持っていない(少なくとも明記していない)」というところもあります。
遺品整理の仕事は、まだまだあいまいさを含むものです。
上記のように、「本来は、その仕事をしてはいけない業者」がたくさんあるのも現状です。
そしてそれを見極めることは、かなり大変であることも事実です。
ただ、一般廃棄物収集運搬業許可などを持っている業者の場合、多くは、「会社概要」のところにそれを記しています。これをチェックしましょう。また、古物商などの認可番号を記しているところはさらに安全性が高いので安心です。
「遺品の整理をすること」は、亡くなった方の心に寄り添うものでもあります。
愛した人、大切だった人の物を整理する作業だからこそ、信頼のおける業者に頼みたいものです。
もちろん、資格を持っている業者でも接客態度が悪いところもあるでしょう。しかし、「法を守る」という最低限のハードルさえクリアできない業者に頼むのは怖い、というのも人情です。きちんとした資格を持っているところの接客態度や見積もりを比較して、頼む業者を決めましょう。
【参考URL】
http://www.is-mind.org/about.html
http://www.sbigroup.co.jp/news/pr/2013/0919_7309.html
http://www.office246.com/kobutsu/column/kobutsu-sinsei.htm